無料-
出会い-
花-
キャッシング
2001.10月号
「特交」(とっこう)ってなに?
特別交付税のこと。
ただいま財政課では、国に対する「普通交付税の算出方法に係る意見」の取りまとめに忙しい。今年から国への提出様式が変わり、その意見(提案、要望)を国が採用した場合の全国影響額を、提案した自治体が示さなくてはならなくなったからである。
つまり、公表されている数字を対象とする改正案以外は、提案する自治体が全国照会を行い、影響額をはじき出さなければならなくなったわけである。
このため、10月に入ってから他県からの照会が頻繁になった。「県立病院に対する繰出金(現計予算額)をご教示願います」、「空港の維持管理経費(12年度決算額)を空港別に記入願います」などといった照会や「決算統計資料の第13表を送付願います」などといった依頼が、毎日2〜3件くらいずつFAX※1で届けられる。
簡単な照会ならよいが、既存の決算統計とは異なる分類での決算額などを依頼されることもあるので、そんなときには担当の私は少し腹立たしい。総務省への意見書の提出期限は10月末までなので、どの調査(照会)も期限が切迫しているからなのだ。(「それならもっと早く調査すればよかったのに」と言われそうだが、総務省から様式が提示されたのが、10月初旬なのである。影響額分析は、本来なら総務省の仕事だと思うのだが…)
以前に比べると、交付税制度の見直しなどのテーマは新聞の片隅に追いやられつつあるが、それでも国がそれなりにまじめに取り組んでいることが感じられる今日この頃ではある。(いや、ポーズだけかもしれない、という気がするときもあるが)
ところで、その世の中の大きい流れはそれとして、私自身は、ただいま特別交付税の算定のための基礎資料作成に忙しい。
特別交付税とは、基準財政需要額では捕らえられない特別の財政需要がある自治体に対して交付されるものである。
特別交付税は交付税総額のたった6%しかなく、感覚的には、国が各自治体に普通交付税として分配した残りを、特別交付税として再分配してくれるという感じである。
では、「特別の財政需要」とは何か。
具体的には、「公立学校の緊急安全対策に要する経費」、「O-157等対策に要した経費」※2など、突発的で、全国的に影響が大きい財政需要に対応するものや、「離島航路運行維持対策に要した経費」、「山岳・海難救助に要する経費」など、その自治体特有な事情による財政需要に対応するものが特別交付税として交付される。
そのほかには、「リーディング・プロジェクト※3推進のためのソフト事業に要する経費」、「他の自治体に先駆けて構築された地域情報システム導入に要する経費」など、“がんばっている”自治体に対しても特別交付税の交付がある。
とはいえ、以前にも少し触れたとおり、国の「地方交付税という財布」は既に赤字であり、「無い袖は振れない」状態になっていることから、“がんばっている”自治体への支援というような、自治体独自の事業についての交付税の交付は今後は縮小していくと思われる。現に、例えば企画振興費は、今年度は昨年度と比べて減額されている。(と、言ってもこれは、赤字分を、今年度から臨時財政対策債の発行で賄うことにしたからなのだが…。ま、この話はまたそのうちね。)
※1:FAX
※2:「公立学校の緊急安全対策に要する経費」、「O-157等対策に要した経費」
前者は、今年6月に大阪府で発生した児童殺傷事件を契機に、全国で学校の安全対策が取られたことによるもので、後者は、1996年の集団食中毒に端を発したO-157事件が契機になっている。
他にも「PCB使用安定器の交換に要する経費」など、ある事件をきっかけに全国的、早急に対応が求められたものについて、特別交付税が交付されるものが多い。今話題の狂牛病対策も特別交付税が交付されるらしいという噂である。
※3:リーディング・プロジェクト
「21世紀に向けての重要な地域政策課題を特定政策課題として位置付け、この特定政策課題に対する地方公共団体等の先導的な取組を当該特定政策課題に係るリーディング・プロジェクトとして位置付けるとともに、これに対し、積極的な支援を行い、もって地域社会の一層の発展に資することを目的として昭和61年度に創設したものである。」(以上、総務省HPより抜粋)
財政的な支援としては、ハードとソフトの両面からの支援がある。
■ハード整備に対する支援
・対象:リーディング・プロジェクト推進計画に基づく中核的な単独事業(=国庫補助事業ではないもの)
・地域総合整備事業債(特別分)の充当率up(75%→90%)
・上記の地域総合整備事業債の元利償還金の30〜55%(自治体の財政力による)が普通交付税の基準財政需要額に算入される →例参照
■ソフト事業に対する支援
・対象:リーディング・プロジェクトにより整備する施設を活用して行う事業、プロジェクトに関連して行うその他のソフト事業(講演会などのイベント、戦略プラン策定など)
・所要経費の1/2を上限に特別交付税が交付される(7年間以内、交付上限額:累計5千万円)
→ 簡単に言えば、1億円分のソフト事業を5千万円の負担で実施することができるということ。
制度創設のそもそもの動機は、多分、地方分権を進める一手段であったろう。自治体の素晴らしい取り組みを支援することによる、その自治体そのもののモチベーションアップと、その自治体に倣おうとする自治体が増えるというアナウンス効果を狙ったものではないだろうか。
ちなみに、岐阜県では「南飛騨健康保養地整備プロジェクト」が平成8年度に指定を受けている。このプロジェクトに興味がある人はこちらへどうぞ。
[PR]動画