ベジータの純愛日記
第二部「幸福」
※各日記に付けられたタイトルは、最終話を除いてブルマ@管理人が独自の判断でつけたものです。
   

呼声

………
…頭の中に映像が浮かんでくる、そうか、これが
走馬灯とかいうやつか。
…カカロットが魔人ブウと戦っている。いや待てよ、
カカロットは魔人ブウとは戦っていない筈だ。
少なくとも俺様が知る限りでは。
走馬灯とは思い出が蘇る筈ではないのか…?
なに…!?スーパーサイヤ人3だと。
カカロット貴様、まだ変身を隠していたのか!
だがこれは一体どういう事なんだ?
俺様は確かに死んだ筈だ。
今度はゴテンクスだと?しかも魔人ブウも随分と形を変えてやがる。
これは俺様が作り出したイメージなのか?
ピッコロは魂は浄化され、すべて無に帰すと言っていた。
一体…、
「ベジータ、目覚めるのだ」

復活

一体これはどういうことだ。肉体も戻ってやがる。
カカロットと同じように頭に輪が乗ってることを考えると、
死んでることに間違いはないようだが。
「ベジータよ、お前の力が必要なのだ」
目の前にいる大男が重々しく口を開いた。
「なんだ、貴様は?」
「こら!このお方は全宇宙の死を司る閻魔大王様じゃぞ!」
「まぁよい、占いばば」
どうやら、隣にいるしわだらけのババァは占いばばという名前らしい。
そして、目の前にいる大男が閻魔大王。
「もしもの事を考えて魂をそのままにしておいてよかったわい…」
「力になってやってくれ」
「フン、悪人のオレに頼むとは」
「相手が魔人ブウじゃ期待に応えられるとは思えんがな」
自分を卑下してはみたものの、今の俺様は喜びに満ち溢れていた。
会いたい者たちがいる。その喜びをかみ締めていた。

住処

俺様は地球に戻ってきた。
もはや、この地球を懐かしく感じるようになっていた。
そう、ここには俺様の居場所がある。
だが、感慨にふけっている場合ではない。
これまで感じたこともない強大なエネルギー。
俺様にできることが何かあるのだろうか?
!!
「カ…カカロット…!!」
瞬間移動か、突如としてカカロットが現れた。
「時間がねえ!ベジータ!だまってこいつを右の耳につけてくれ!」
そう言ってカカロットは、イヤリングらしき物を差し出した。

合身

どうやら、そのイヤリングは「ポタラ」とか言うらしい。
付けた2人が合体して巨大な力を得られるという代物のようだ。
つまり、俺様とカカロットが、
「合体だと…?ふざけるな、なぜオレが貴様なんかと…ことわる!」
「おめえならそう言うだろうと思ったけどよう…それしかねえんだよ、
魔人ブウに勝つにはさ!!」
カカロットの慌てぶりからも魔人ブウの強さが分かる。
「貴様と一緒になるぐらいなら消された方がマシだ…」
そうだ、カカロットにはどうしても許せないことがある。
しかし、確実に魔人ブウも近づいてきていた。
「たのむベジータ、このポタラをつけてくれ!!終わっちまうんだぞ
なにもかも…!!」
「気にいらんのだ…」
俺様は重い口を開くと、今度は叩きつけるように言葉続けた。
「貴様はオレと戦ったとき更に上の力を隠していた!!そんなことで
オレのご機嫌を取ったつもりか!!」
「何がスーパーサイヤ人3だ…!!いちいちカンにさわるヤロウだぜ!!
そんな奴と合体なんてできるか…!!」
「わ…悪かった、あれは変身できる時間が限られてたんだ」
カカロットは殊勝な態度を見せるが、そんなことで
俺様のプライドは戻らない。
「言い訳などそうでもいい。なめられたもんだぜ」
そうしてる間にも魔人ブウは近づいている。
カカロットの焦りも限界に近づいていた。
「じゃあこの事も知ってるか!?残ったみんなは魔人ブウに食われちまった…
ブルマもだ!!」
「そんでもって、トランクスは奴に吸収されちまったんだぞ!!」
…!!
魔人ブウはもう目前だ。
「ベジータ!!!!」
「…よこせ!!はやく」
なんてことだ。この俺様が自分のプライドよりも
ブルマやトランクスの事を優先させてしまうとは。
俺様がポタラを付け終わった後、カカロットは更にとんでもない事を
言い出しやがった。
「そういや言っとくが、この合体は一度やったら、もう2人には
もどれねえ!いいな!!」
ちくしょう!なんて最悪な事が重なるんだ。
俺様はもう俺様じゃない。だが昔のように自分が変わることに、
もはや苛立ちは感じない。その理由を俺様は誰よりも分かっていた。
そして、最強の戦士は生まれた。

挑発

「ベジータとカカロットが合体してベジットってとこかな」
今、そこに誕生した最強の戦士は、明らかに俺様でも
カカロットでもなかった。
「さらに、こいつがスーパーベジット!!」
だが、喋ってるのは、俺様の意思であり、言葉でもある。
とは言うものの同時にカカロットの言葉であるようにも感じる。
なんとも不思議な気分だ。
とはいえ、最強の力を手にした事に変わりはないようだ。
なにせ、あの魔人ブウをさんざんコケにできる程なのだから。
「それにしても、これじゃちっとも面白くない。もっと
本気でやってほしいな」
俺様に手も足もでない魔人ブウの表情は怒りに満ちている。
「それとも本気でやってこのザマだったか?」
魔人ブウは趣向を凝らし、様々な攻撃をしかけてきたが、
そのどれもが、俺様には通用しない。
もはや勝利は確信的だ。
「もうちっと強いのかと思ったがな、オレに出させてくれよ…
本気を」
含み笑いをしながら、そう言葉を投げかける。
魔人ブウのプライドは完膚なきまで砕かれ、怒りは頂点を
超えている。
だが、俺様はそれでも挑発の言葉をやめない。
「もう飽きたから終わりにするか。10数えるまで待ってやるから、
お祈りでもするんだな」
そう俺様には一つの考えがあった。

体内

俺様の考え通りだった。
命運の尽きた魔人ブウはついに俺様をトランクスや悟飯のように
吸収しやがった。だが一つ違ったのは、その瞬間、
俺様はバリヤを張って、完全には吸収させなかった事だ。
俺様は魔人ブウの体内にいた。
「バリヤを解いて悟飯たちを探さないと…、死んでなきゃいいが」
そう、わさと体内に吸収されたのは、以前に吸収されたみんなを
助けるためだ。
「え!?…」
バリヤを解いた瞬間だった。二度と別れない筈だった2人が、
なんと元に戻ったのだ。
「おっかしいな〜、ポタラで合体したらもう2度と戻れないって
言ってたのに…」
カカロットは怪訝な顔でポタラを見つめているが、こんな
ラッキーな事はない。
「貴様との合体など、もう2度とごめんだ」
そういうと俺様は目の前でポタラを破戒してやった。
「なんてことを…!!もう2度と合体出来ないじゃないかよ!
それにおめえは死んでるんだぞ!合体してなかったら、またあの世へ
戻るしかないじゃないか!!」
「貴様と合体してよりはマシだ」
慌てふためくカカロットを尻目に俺様は吸収されたみんなを
探し始めた。
どうやら、カカロットも諦めてポタラを破壊したようだ。
「おい!カカロット!こっちだ!いたぞ!!」
全部で4人。皆、繭のような物に包まれてはいるが、どうやら
生きてはいるようだ。
俺様とカカロットは次々に4人を魔人ブウの体内から
引き剥がしていった。
だが、その時奇妙な物を発見した。
同じように繭に包まれた、元の魔人ブウだ。

脱出

俺様は繭に包まれた、元の魔人ブウを体内から引き剥がそうと
手を伸ばしていた。
自らの体内に現れた、現在の魔人ブウはそれを見て、
ひどい慌てぶりだ。
「そいつだけは無理にちぎっては駄目だ…!オレがオレじゃなくなくなる!!」
だが、奴の言うことを素直に聞く俺様じゃない。
口元に笑みを浮かべると、思い切りそれを引きちぎった。
するとどうだ。
現在の魔人ブウはその場に倒れこんだかと思うと、瞬く間に形を
失っていった。
だが、このチャンスを逃がす手はない。
「今のうちだ、さっさとみんなを連れて外に脱出するんだ!!」
俺様ろカカロットは、それぞれ繭に包まれた仲間を2人づつ手にすると
出口を探し始めた。
「おい!なんだかそこらじゅうがぐにょぐにょ動き出したぞ!」
カカロットに言われるまでもない。
「変身するんだろうぜ!あのデブかガリにな!」
そうなれば、まだ俺様たちにも十分勝機がある。
だが出口が見つからない事にはどうにもならない。
「ベジータ!!見ろよ!向こうが少し明るい!」
いいぞ。どうやらカカロットが出口をみつけたようだ。
俺様たちは、その出口から脱出した。
どうやら救出作戦は成功に終わったらしい。

崩壊

案の定、魔人ブウは変身している。
だが、俺様の読みはどうやら間違っていたらしい。
今まで見せたことの無い小さな風貌に変身した。
読みは違ったが、事は俺様たちに好転したらしい。
「みろよ、ずいぶん縮んじまったな」
「やったな!おれなら、なんとかなるかもしれねえぞ!」
カカロットの表情にも同じように安堵が色が伺える。
だが、それは本当に一瞬だけの事だった。
なんと魔人ブウは、何のためらいもなく地球めがけて
巨大なエネルギー弾を放った。
「ちいっ…!!」
俺様はとっさにエネルギー弾を放ち、魔人ブウが放ったものを
はじく事で、地峡への衝突を免れた。
「ふざけやがって…、てめえも吹っ飛ぶつもりか…!」
先程の変身から、魔人ブウには知能というものが
感じられない。破壊するだけの怪物になったということか。
「おい!ブウ!星を吹っ飛ばすのは貴様の勝手だがな!
オレたちと戦ってからにしたらどうだ!!」
なんとか標的をこちらに変えるしかない。
だが、破壊の権化となった怪物には、そんな言葉は届く筈も
なかった。
更に巨大なエネルギー弾を手の上にかざすと、再び地球めがけて
放ちやっがった。
もはや俺様たちに跳ね返せるレベルのものではない。
終わりなのか…?
「ベジータ、こっちだ!!みんなと瞬間移動する!!」
その手があったか。
しかし、この一瞬で地球外に移動することなど出来るのか?
しかも、カカロットは何を思ったか、トランクスや悟飯たちじゃなく、
サタンとかいう虫けらとデンデを助けようと手にしている。
不意に目の前に界王神が現れる。
手を伸ばす界王神。どうやら他の場所に移動できるようだ。
だが、トランクスたちは置き去りだぞ。
「おい…」
そう発したとき、すでに俺様たちは界王神の手により、
地球を離れていた。
そして地球は完全に破壊された。   

希望

俺様たちは界王神界という異世界にいるらしい。
そう地球は魔人ブウによって破壊されてしまった。
もはや、ドラゴンボールもない。
すべての希望は絶たれてしまったのだ。
そうとは知らず、目の前ではカカロットが助けた
サタンとかいう虫けらがはしゃぎ回っている。
くそったれ…、せっかく肉体を手に入れたのに
もはやブルマにもトランクスにも会うことは出来ないのか。
「そ…そうだ!!」
大きな声をあげたのは、同じくカカロットが助けたデンデだ。
「ナメック星に行けば、新しい最長老さまがまたドラゴンボールを
造ってと思いますよ!!」
「そうか!!」
俺様は思わず歓喜の声をあげた。
界王神の力でナメック星にもすぐ移動できるらしい。
いいぞ、希望が出てきた。
その頃、界王神たちが覗く水晶玉には、地球の爆発でいったんは
粉々になった魔人ブウがすでに復活を遂げていた。
それを見た界王神たちは再び俺様たちにポタラを渡す。
また合体など冗談じゃない。
その時、ポタラを見つめていたカカロットが口を開く。
「こいつはもういい、かえすよ」
「オラたち向きじゃねんんだ、悪いけどさ」
「自分ひとりの力で戦いてえんだ。悪いなこんなヤバイ時に」
そう言ってカカロットは俺様の方に視線を向ける。
その通り。
「よく言ったなカカロット、それこそが…」
「サイヤ人だ」
不適なえ笑みと共に、俺様はポタラを握りつぶした。

襲来

ついに魔人ブウのヤロウは界王神界までやってきやがった。
先程、界王神が使った瞬間移動をあっというまに学習したようだ。
今ここにいるのは、俺様とカカロットだけだ。
他の者たちは界王神の力で安全な場所に移動している。
だが、残念な事にジャンケンに負けて、カカロットに
先陣を許してしまった。
2対1で戦うかうなどサイヤ人のすることじゃない。
「この目で見せてもらうぞサイヤ人3というのを…」
仕方なく俺様は少し離れた崖の上で戦いを見守る事にする。
スーパーサイヤ人3に変身するカカロット。
初めから全開で行く気だ。

運命

今まさに、
「いよいよ始まるか…全宇宙の運命を賭けた最後の戦いが」
目の前で繰り広げられる、力と力の凄まじい戦い。
そして、俺様はセルの時と同じように、
傍らでそれを見ているだけだ。
だが、あの時のような苛立ちは少しもない。
ジャンケンに負けたからじゃない。
これが運命というやつなんだ。
俺様は今まで運命というやつに常に立ち向かってきた。
サイヤ人の王子であるという運命。
常にナンバーワンを目指さなければならない運命。
それこが俺様のプライドとなり、自分自身を支えてきた。
だからこそ、自分より強い者の存在を受け入れる事は
出来なかった。いずれ必ず超えてやると特訓を繰り返してきた。
だが、運命を受け入れた時、人は驚くほど穏やかになれる。
「がんばれカカロット…、お前がナンバーワンだ!!」

異変

なんという重く早い攻撃だ。
カカロットはこんな奴と戦っていたのか…!!
俺様は魔人ブウと戦っていた。
カカロットが魔人ブウを倒すのに1分間、気を溜める必要が
あるという。
その為に俺様に出番が回ってきた訳だが、これほど1分が
長く感じたのは初めてだ。
「まだか早くしろ…!!」
だが、カカロットの気はいっこうに溜まる気配がない。
「ブウーーーー!!!!」
なんだ?
サタンとかいうヤロウだ。一体どういうつもりだ。
相変わらず、これが夢だと思ってるらしい。
魔人ブウは俺様を解放し、当然サタンを殺しに向かう。
ところがどうだ。
サタンを殺そうとした魔人ブウが突然苦しみ始めた。
「ア…アガ…」
今がまさにチャンスだ。
「カカロット…!いつまでかかるんだ…まだ…か…」
「分かってるが変なんだ…、溜めた気が減り始めてる…!」
なんだと、どういうことだ。
その時だった。
魔人ブウが突然、元のデブだった魔人ブウを口から吐き出した。

光明

「お前嫌いだ。サタンいじめるな」
目の前では、元のデブの魔人ブウと現在の魔人ブウが
戦っている。
だが、形勢は現在の魔人ブウの方が明らかに上だ。
しかし、このチャンスを逃す手は無い。
ところが、なんてことだ。
肝心のカカロットがスーパーサイヤ人から元の姿に戻ってしまった。
「そんな…」
当のカカロットも驚きを隠せない。
「どうやら最悪のゲームになっちまったらしい…」
だが俺様には、わずかだがその時、可能性の光が頭に浮かんでいた。

心願

「や…やっぱし生身でスーパーサイア人になると、やたら
気をくっちまうらしい…」
カカロットは万策尽きたという感じで頭を抱える。
目の前で繰り広げられてる魔人ブウ同士の戦いも
デブの負けという結果に終わるのは時間の問題だ。
俺様の頭に浮かんだ可能性の光。
もはや、それに賭ける他ない。
「界王神たち、デンデ!聞こえるか!?オレの声が…!」
「ああ…聞こえてるが…」
安全な場所で見守っているであろう界王神の声が聞こえる。
「よし…!今すぐナメック星に行ってドラゴンボールを
かき集めて来い!」
「ベ…ベジータ、どうすんだよ…、
まだ早いぜ、ドラゴンボールを使うのは」
怪訝な表情を浮かべるカカロット。
無理もない。この考えは途方もなく、
同時に俺様が考えるような手ではない。
なにしろ…。
「カカロット、貴様今まで何度地球を救った…?」
「な…なんだよ…急に…」
「たまには地球の奴らにも責任を取らせるんだ」
なにしろ、この俺様が他人の、それも地球中の人間の力を
借りようというのだから。
昔の俺様には到底、想像すら出来まい。
俺様はいつしか、少しだけ人の心を持つようになっていた。
それも全て地球という星があったおかげだ。
ブルマのいる地球。トランクスの生まれた地球。
「ベジータさん!!ドラゴンボールはすでに7つ集まっています!」
デンデの声だ。
「さっそく、ポルンガを呼び出してくれ!!叶えて欲しい願いは
2つ!!」
地球を守りたい。
「まずは破壊された地球を元通りに直して欲しい事。
次に、あの天下一武道会のあった日から死んだ者全てを
悪人を除いて生き返らせて欲しい事!!この2つだ!!」

呼集

「みんな生き返りましたよ!!ベジータさん!!」
デンデの声だ。どうやら願いは叶ったらしい。
これで地球は甦った。
「ベジータの頭の輪も取れた!!生き返ったんだ!!」
カカロット言われて気づいた。俺様はもう悪人じゃないらしい。
単純に喜んでよいものなのか。複雑な心境だ。
「始めるぞ、用意しろ。元気玉の用意だ」
「おい、おめえの考えって元気玉だったのか!?
そりゃ無理だぜ、ブウが相手じゃ。いくらちょっとずつ元気を地球人
みんなから集めたって…」
カカロットの同様も無理は無い。だが言った筈だ。
「たまには地球の奴らにも責任を取らせろと…!
少しずつではない。ギリギリまで元気を集めさせてもらうんだ」
今、俺様の声は地球中に聞こえるようになっているらしい。
「聞こえるか、世界の人間ども…!!オレはあるところからお前達に話しかけてる」
この地球中に声が聞こえる力は、界王というやつのものらしい。
「分かっているだろうが、お前たちのほとんどは魔人ブウに殺された。
だが、ある不思議な力で生き返らせて貰ったんだ」
そう、ここまで戦ってこれたのは様々な者たちの助けがあったからだ。
「今あるところで、お前達に代わって魔人ブウと戦っている戦士がいる。
だが、情勢はかなり悪いと言える」
人は利用し合うものであって、助け合うものではない。
「そこで、お前たちの力を借りたい」
俺様は幼い頃からそう思って生きてきた。
それがサイヤ人として当たり前の生き方だと、信じて疑わなかった。
「手を空に向けてあげろ!!お前たちの力で魔人ブウを倒すんだ!!」
だが、カカロットはそうじゃなかった。俺様は奴に教えられた。
「よしカカロット!!始めろ!!」
人生は捉え方次第でどうにでも変わるものなんだと。

決着

「なんでだ!!なんでみんな分かってくれねえんだよ!!」
なんてことだ。
カカロットと俺様がいくら呼びかけたところで、
少ししか元気が集まらない。
「みんな気をつけろ!!本当に力を吸い取られるぞ」
「バーカ、だれがお前の言う事なんて聞くかよ」
くそったれな地球人どもめ…!!
俺様が人を信用する気になっというのに。
その時だった。
「き、貴様らいい加減にしろーっ!!!さっさと協力しないかーっ!!
このミスターサタン様の頼みも聞けんというのかーっ!!」
サタンとかいうヤロウだ。
その途端、「サタン」という大合唱と共に地球中から元気が集まり始めた。
あんな虫けらがこの場面で役に立つとは、世の中とは分からないものだ。
「き、来た!!!!!離れてろベジータ!!!行くぞーー!!!!」
「くたばっちまえーー!!!」
魔人ブウめがけて、元気玉をはなつカカロット。
だが、魔人ブウのヤロウは、なんとそれを受け止めやがった。
どうやら、超巨大な元気玉を御しきるには体力を消耗しすぎているらしい。
計算が違った。まさかカカロットの方が打ち負けてしまうのか。
しかし、俺様たちは肝心な事を忘れていた。
そう、ポルンガに叶えて貰った願いは2つ。
まだ願いが一つ残っていたのだ。
「悟空さん!!3つ目の願いで悟空さんの気が戻ったでしょ!?」
ナメック星にいるデンデの声だ。
「も、もどった!!もどったぞー!!サンキュー!!ドラゴンボール!!」
スーパーサイヤ人に変身するカカロット。勝負は決まったな。
「おめえはすげえよ。よくがんばった、ひとりでよ。
今度はいい奴に生まれ変われよ。1対1で勝負してえ。待ってるからな」
二言三言呟くと元気玉に力をいれるカカロット。
「またな!」
そして、魔人ブウは跡形もなく消え去った。

平和

魔人ブウとの戦いより10年の歳月が流れていた。
俺様とブルマはカカロットの家にきていた。
カカロットの奴が天下一武道会にでるというからだ。
なぜ、今になってそのような事を言い出したのか。
「すごそうな奴がでるからさ」
それがカカロットの答えだった。
一体何者だというのだ。
遅れてトランクスがやってきた。
その場カカロットと共に修行をしていた梧天と話を始める。
「なんだよ梧天、お前も出場するつもりなのか?」
「明日はデートの約束してたのにさ…」
ぼやく梧天。
「フン、お互いわが子の軟弱ぶりには苦労するな」
苦笑気味にカカロットに言葉を向ける
「まぁ平和ってことだろ?」
そのとおりかもしれん。
あれから世の中はすっかり平和だ。
昔の俺様なら争いの無い平和な世の中に辟易していただろう。
だが、今はそんな気持ちは微塵もない。自分の変化に苛立つ気持ちも。

そして天下一武道会の日がやってきた。

転生

くだらない予選が終わり、天下一武道会の本戦抽選会が始まった。
だが、いくら見渡しても「すごそうな奴」は見当たらない。
「では、ウーブ君」
司会者が一人のガキの名前を呼んだときだ。
カカロットが同じく大会に出場するデブの魔人ブウに耳打ちした。
「4番だ。あの子を4番にしてくれ」
魔人ブウの魔法でくじを操作するつもりらしい。
もちろん対戦する3番はカカロット。
「なんだと…、あんなガキが、ま、まさか…」
思わず俺様は言葉を詰らせた。
「10年前、あのとんでもねえ悪の方の魔人ブウが死ぬとき願ったんだ。
今度はいい奴に生まれ変わって1対1でやろうな…て…」
「閻魔大王のおっちゃん、それ聞いて気を利かしてくれたらしいだ」
それが、カカロットの答えだった。
「あのガキがその生まれ変わりだと…!?」
目の前にいるガキは、肌は浅黒くみすぼらしい身なり、
もちろん、ガキらしく身長も低い。
どうやら田舎から出てきたらしいが、とても強いとは思えない。
「間違いねえ、オラにはなんとなく分かるんだ」

観戦

目の前では第1回戦が始まっている。
戦っているのは、悟飯の娘であり、
カカロットの孫にあたるパンだ。
相手は、でかいだけの大男。結果は見るまでもない。
いくら女といえどサイヤ人の血を引いているのだから。
パンをみると思い出すのは、わが娘のブラの事だ。
俺様によもや娘が出来るとは夢にも思わなかったが…。
年はパンと同じぐらいだが、俺様はカカロットのように、
娘(カカロットの場合は孫だが)に格闘技を教えるほど無粋ではない。
…などと考えている間に、1回戦はパンの楽勝で終わっていた。
次はいよいよ、カカロットとウーブとかいうガキの試合だ。

悟空

なんてことだ。
簡単な組み手の応酬だが、ウーブの実力を知るには
それで十分だった。
どうやらカカロットの言っていた事は本当らしい。
手を止め武舞台の上で話を始めるカカロットとウーブ。
しばらくすると、カカロットは観客席まで飛んで行き
悟飯とチチに二言三言話かけた。
すると今度は、ウーブを背中に乗せどこかへ飛んでいってしまった。
唖然とする一同。
だが、俺様には奴の魂胆が分かっていた。
サイヤ人の血が騒ぐのだろう。
ウーブの奴を鍛えて思い切り戦うつもりなのだ。
また奴との対戦はお預けになってしまったな。
だが、これで終わりじゃない。
いつか貴様と決着をつけられる日を心待ちにしているぞ。
「またな、カカロット」

最終話〜幸福〜

今日はブラの10回目の誕生日だ。
ブルマのやつは、おもちゃ屋を丸ごとプレゼントするという。
呆れた親馬鹿ぶりだが、それは俺様も同じだった。
なにしろ、ブラが世界一珍しい石が欲しいというので、
1ヶ月も探し回っていたのだから。
そう、その珍しい石というのは他でもない
「ドラゴンボール」だ。
本来、ドラゴンレーダーさえあれば、簡単にみつけられたのだが、
ブルマの「ドラゴンボールは宇宙の摂理さえ破壊しかねない」という
考えの下、数年前に破壊されたのだった。
散々利用しておいて、何とも勝手な言い草だが、やはり、
それが正しいのかもしれない。
レーダーさえなければ、すべて揃える事など不可能だろう。
「パーパ!!早く!!」
ブラの声に促されて、パーティーを行う部屋に入る。
部屋全体を覆うような巨大なケーキが眼前を飾る。
毎度のことで見飽きたが、最初に見たときは思わず言葉を
失った。ブルマが子供の時からそうらしいが、世界一の金持ちの
考えることは、この俺様でさえ理解に苦しむ事が多い。
ケーキに立てられた10本のろうそくが部屋を照らす。
俺様はブラに約束のドラゴンボールを差し出した。
「ありがとう!!パパ!!」そう言って、嬉しそうに見つめるブラ。
今、ブラが手にしているドラゴンボールは4つ星が入った
四星球(スーシンチュウ)とかいうやつで、その昔、
カカロットとブルマが出会うきっかけになった物だという。
そういえば、俺様が地球にやってきたのもドラゴンボールの為だった。
すべてはドラゴンボールの導きの下に…か。
そして、今わが娘が、その原点とも言うべき四星球を手にしている。
なんとも奇妙な巡り合わせだ。
そのブルマが俺様に向かって微笑みかける。
同じようにトランクスとブラも。
戦闘民族であるサイヤ人にとって、誰よりも強い力を手にすること、
より強い相手と闘い勝利する事こそが、唯一無二の幸せであると
信じて疑わなかった。
だが、そうじゃないという事を、ブルマが、トランクスが、ブラが、
そして、カカロットが教えてくれた。
本当の幸せってやつは、そんな他人との対比から生まれてくる
ものじゃない。自分自身の中から湧き出てくるものなんだと。

俺様は今、最高に幸せだ。

 
                              
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☆補足☆ どうやら、このあとにエピローグがあるらしいです。全てはベジータの筆次第!

 

 

 

 

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